依央に抱きしめられるのは落ち着くけれども、さすがに緊張が優ってしまって、もう眠れそうになかった。
彼は、先ほど目を開けていたのが嘘だったかのように、私の頭上でまた寝息を立て始めている。けれど、彼の腕が緩む様子はない。
ずっとこのままでいたい、とは思っていたけれど、呼吸の方が限界だった。彼の胸に顔を押し付けられているので、酸素が足りなくなってくる。
仕方なく私は、その場で身体をよじらせながら、彼を起こさないように、彼の腕からの脱出を試みた。
「……何」
突如、頭上から声が聞こえてくる。低くて、いつもよりもぼんやりとした依央の声だった。
「起きてたの?」
「……」
また寝ぼけている、と思った。朝が弱いのだろうか。
もう一度、彼の腕をくぐり抜けようとした。そのとき、彼がもう一度私を抱き直してきて、私はまた彼の腕の中に収まってしまう。
そして、彼は目を瞑ったまま、私の頭頂部にキスを落とした。
柔らかい彼の唇の感触のせいで、全身が蕩けそうになった。顔にどんどんと熱が集まるのを感じる。綾人くんとキスをするときでも、こんなふうにはならなかったのに。どうして、依央が相手だとこうなってしまうのだろうか。
わからなかった。わからなかったけれど、この瞬間が幸せである、ということははっきりと理解していた。


