綾人くんの口から放たれた謝罪に困惑して、後ろの方を振り返る。
部屋の奥の方にいるはずの依央は、こちらに戻ってくるでもなく、反応を示すわけでもなかった。依央の姿が見えない。おおかた、こちらの様子を伺いながら、私たちを敢えてふたりにしているのかもしれない。
私はその場でただひとり、綾人くんと向き合わなければならないのか。そんな息苦しさを覚えながら、もう一度私は綾人くんの方を見た。
「……私の方こそ、その、」
「いいよ、何も言わなくて」
「……」
「ごめん。あの時はひどいことして。許されることじゃないと思ってるけど」
確かに、歪んでいたと思う。けれど、今なら少しだけ、わかる。
私が学校で嫌がらせに遭っていることを知った綾人くんが、私を学校から引き離そうとして、私を守ろうとして暴走してしまった、ということをだ。
私はまだ、綾人くんから与えられたゼリー飲料の、素っ気ないマスカットの味を覚えている。彼から与えられたひとつひとつの言葉を、行動を軽視したのは私だったとも思う。
それでも、彼からされたことを私は一生忘れることはできないだろうし、許したい、とも思わない。
どうしたら良いかわからなくなって、私は結局、ごめん、という心にもない謝罪の言葉を呟くように言った。私の謝罪を、彼がどう受け取ったかはわからなかった。


