性、喰らう夢




 綾人くんの家に最後に行ったとき、私は確か依央のジャージを借りていて、そのジャージは拘束されるときに綾人くんに脱がされたままだった。だから、電話越しの彼が言うジャージ、というのは依央のもののはずだ。

 依央の顔を見る。依央のジャージだよ、と言うと、彼はすこし迷っているような顔をした。ジャージが1着ないままで、彼もきっと困っていたのだろう。

 良いのか? と依央が小声で囁いてくる。私はひとつ頷いて、スマホに向けて声を発した。



「じゃあ、綾人くん、ジャージ持ってきてほしい。でも、彼も一緒だから」



 だから、もうそういうことはしないよ、とは、依央がいる手前、言わないでおいた。けれど、その言葉の意味を綾人くんはわかっているようだった。綾人くんは、わかった、と返事をして、こちらの言葉を待たずに電話を切った。



「……これから、綾人くんが来るから、依央もここに居て」

「それはもちろん、だけど」

「だけど……?」

「いや、何でもない」



 依央が濁した言葉の続きが気になったけれど、別にそれを深追いしたいわけではなかったので、私はそっと、スマホの画面を閉じた。

 正直、綾人くんに会うのは怖かった。けれど、夏目先輩のときだって、祥平のときだって、依央がいたから何とかなったのだ。依央にばかり頼ってしまって申し訳ない気持ちがないこともないが、けれど、私にはそれ以外の方法がわからなかった。

 綾人くんとのことも、ちゃんと、終わらせようと思った。