綾人くんからかかってきた二度目の電話を、依央が同じように切った。スマホのバイブが収まって、部屋に静寂が訪れる。
着信拒否すれば、と依央が言うので、私はそっと自分のスマホを持ち上げた。着信拒否って、どうやってやるんだっけ、なんてことを考えながら、連絡先一覧を睨みつけた。
そのときまた、今度は間髪を入れずに、また電話がかかってくる。表示されたのは、同じ名前だった。私の手の中で震える彼のフルネームが3回目にして途端に怖くなって、私はもう一度依央の顔を見上げた。
「依央、怖いよ。このまま着信拒否したら、どうなるんだろう」
「……くそ」
依央が私の手からスマホを奪い取った。
何をするかと思えば、彼はそのまま、今度はその指を緑色のボタンに触れさせた。何を考えたのかはわからないが、電話に出るつもりなのだろう。
音声をスピーカーでの出力に切り替えて、彼がスマホをテーブルの上に置いた。途端、聞き慣れた声がスマホのスピーカーから溢れ出した。
『……あ、お前?』
「あ、うん……」
何とか言葉を絞り出す。綾人くんは私の声を認識するや否や、ごめん、と言った。
依央の方を見る。彼は眉を顰めながらも、黙って私たちの会話を聞き続けていた。口を挟む気は今のところないらしい。
何を言われるかと思ってびくびくしていたが、彼は思った以上に穏やかだった。
『電話、このまま出てくれなかったらどうしようかと思った』
「……」
『俺、お前にどうしても言わなきゃないっていうか、謝りたいっていうか、その……』
いつもの鋭い口調からは想像できないくらいに、綾人くんは落胆している様子だった。
そんな彼に対する戸惑いの表情を見せると、今度は依央がその口を開いた。結局、彼は助け舟を出してくれるらしかった。


