性、喰らう夢




 依央が夏目先輩に、俺、こいつの彼氏なんです、と言ったとき、あの人はあまり依央の言葉を信用していないように見えたけれど、祥平は割と、依央の言葉を信じているみたいだった。その証拠に、祥平の表情がどんどんと暗くなる。

 祥平は、鈍いところがある。それでいて、臆病で、不器用なのだ。夏目先輩みたいに機転の利いた言葉遊びなどはできない質なので、依央から投げかけれられた突然の情報の波に、彼はただひたすらに困惑しているみたいだった。

 けれど、そんな祥平でも、やはりこの場における依央に対する嫌悪感みたいなものはきちんと持ち合わせているようで、彼は態勢を立て直して依央に食って掛かった。



「……でも、依央くんはさ、こいつの偏食、どうにかできるわけ?」



 祥平からの反撃に、今度は依央がたじろいでいた。

 依央の後ろにずっと隠れていた私は、一歩踏み出した。依央の隣に立って、彼の右腕に自分の左腕を絡める。


 私が出て行かなければ、と思った。いつまでも依央に頼っているわけにはいかないような気がしていたし、私自身が言わなければならない、とも思ったからだった。



「私、もう大丈夫だから、ごめん、祥平」

「……どういうこと?」

「もう、祥平がいなくても、食べられるようになった、っていうか」



 私の舌は、今朝依央と食べた野菜スープの優しい味を覚えている。コンビニで買った簡素なスープだったけれど、あの味が私に自信を与えてくれる。

 私にはもう、祥平がいなくたって大丈夫だ。

 依央の腕を強く握る。