この季節にしてはやけに生ぬるい風が頬を撫でた。湿気ぽくて、不快だった。
私は祥平の顔をまともに見ることができなかった。彼の足元に視線をやりながら、えっと、と不自然な挙動をしてしまう。
そんな私の様子をよそに、祥平が続けて話しかけてきた。
「もう死んじゃうんだと思ってた」
「……」
彼の口から飛び出る物騒な言葉が刺々しい。
その言葉は彼なりの皮肉なのかもしれなかったが、そうだとしたら尚更、彼から発せられる言葉のひとつひとつが気持ち悪かった。彼から手渡された言葉が嫌悪に成りかわって、私の神経の不快なところを撫でる。
何も言わないまま言葉を詰まらせている私を見て、祥平はさらにその唇を動かした。
「ご飯、ちゃんと食ってるか?」
口調は優しいけれど、その声色の奥からどす黒い何かが見え隠れしているような気がしてならない。
食べている、と答えても、食べていない、と答えても、予想される結末は最悪だった。食べていると答えたら、どうして、と言われるに決まっているし、食べていない、と答えたら、祥平はまた私に近づいてくるに違いない。
だんまりを決め込んだ私を見て、少しずつ祥平が苛立ってきていた。あからさまな苛立ちを見せる彼の姿は初めてだったので、彼に対して感じていた嫌悪感が、徐々に恐怖によって上書きされていく。


