「どうして、何も言ってくれなかったんだろう」
あんなに私のことを心配してくれた祥平が、まさか私への嫌がらせを見てみぬふりをしていただなんて、やっぱり信じられない。
けれど依央は、私の疑問に対してまるで当たり前のことかのように答えた。
「面倒だったんだろ。しかも元カノが嫌がらせの実行犯なんて」
「私のこと、好きだって言ってたのに?」
「それこそが、祥平のキモさなんだって。面倒事には巻き込まれたくないけど、好きな人は手に入れたいって」
「……なるほど」
今まで食事の面でたくさん面倒を見てくれた祥平には申し訳ないけれど、依央の言うことに納得が出来てしまった。
けれどそのうち、そんなふうに他の3人のことを悪く話している自分自身すらも気持ち悪くなってくる。夏目先輩と祥平、そして綾人くんのことを迷惑な存在としてこきおろしておきながら、彼らに寄生して甘い蜜を吸っていたのは私の方なのに。
そんな思考に陥って自分がいやになってしまったので、
「でもさ、それって、依央が私のことを助けてくれる理由にはならなくない?」
と、あえて話を逸らしてみる。
ただ、話題をあの3人のことから別のものに変えたいだけだった。けれど彼は、また迷ったような表情を浮かべた。
「それは、お前が……」
「私が?」
「……」
「依央、どうしたの」
「何でもない」
そっか、と返事をする。彼の言葉の続きが気になって仕方なかったけれど、言いたくないなら、言わなくても良いのかもしれない、とも思う。
私たちはそのまま、膝を抱え続けた。そのうち、だんだんと空間が蕩けてくる。


