「別に、どうしたいわけでもない、けど」
「……」
彼は膝を抱えて、床を眺めている。そして意を決したように、依央が口を開いた。
「夏目先輩も、祥平も、綾人って奴も、全員自分中心なんだよ」
「……夏目先輩と綾人くんはなんとなくわかるけど、祥平はどうして?」
祥平が須藤さんのことを振ったからってこと? と尋ねると、彼はいや、と首を横に振った。
「言っておくけど、祥平はお前がひどい嫌がらせに遭ってたのはもちろんだけど、その実行犯がマナのグループだったってことも、知ってたらしい」
「え?」
今まで祥平に嫌がらせの相談をしたことはなかったけれど、同じ学校にいるのだから、彼が嫌がらせのことを知っている、というのは、そこまで不思議なことじゃない。
でも、私ですら最近までわからなかった嫌がらせの実行犯を、なぜ祥平が知っていたのだろうか。祥平と須藤さんが元恋人だということに関係しているのだろうか。
「依央、それって本当?」
「本当だって」
「でも、今まで嫌がらせのことなんて話したことなかったし、祥平だって何も……」
「だから、見てみぬふりしてたってことだろ」
「……」
祥平の姿が目に浮かぶ。確かに、彼が私の体調を心配してくれたことはあっても、私への嫌がらせに対して特別何かを言ってくることはなかった気がする。
嫌がらせに気付いていないからこそ何も言ってこないのだとばかり思っていたが、彼が全てを知っていたというのなら、話は別だ。
祥平は、あんなことを言っておきながら、私への嫌がらせを黙殺していた、ということらしい。


