彼が私の言葉をどう解釈したのかはわからないが、その話はそれで終わりになった。きっと依央自身も、私が発した頓知気な言葉に戸惑って、何を言うべきかわからなくなってしまったのだろう。申し訳ないことをしたな、と思った。
けれど私たちの間に流れる空気が悪くなるということはなかった。依央がそれを意図していたのかはわからないが、彼は変わらぬ態度で私に接してきたので、私も彼に調子を合わせた。
結局、依央は夜まで部屋に居た。途中でコンビニに行って、その都度食べ物を買ってきてくれた。私は朝に食べた野菜スープでお腹が一杯になっていたので、昼と夜はゼリー飲料を少しずつ口に入れた。
「お前、明日は学校どうする?」
この間は夏目先輩の件があったから来てもらったけど、嫌なら別に無理して来なくても、と彼が付け加える。
きっと、嫌がらせのことを気にしてのことなのだろう。けれど私はなんとなく、もう直接的な嫌がらせは起きないような気がしていた。それに、別に学校に行く理由はなかったけれど、逆に行かない理由もない。
「依央が行くなら、行く」
「じゃあ行くってことで。だったら俺、一旦家帰るから」
埃の被った時計を見る。時刻は夜の8時をまわっていた。
荷物をまとめる彼を見ていると、途端に寂しさが募ってくる。彼がいなくなったこの部屋で一人きりになった自分を想像すると、苦しくてたまらなくなる。
「依央、行かないで」
口をついて出たその言葉に反応して、依央がこちらを振り返った。


