ぼうっとしたままその場を動けずにいたときだった。
あまり聞き慣れていない足音と、ぎこちないノックの音が3回、聞こえてくる。祥平のノックはいつも2回だということを鑑みれば、ノックの主が祥平でないことだけは確実にわかる。
全身の力を振り絞って、立ち上がる。ふらふらと壁伝いに歩いて、決死の思いでドアを向こう側に開くと、やはりそこには、期待通りの彼の姿があった。
「顔色、わる」
「……第一声がそれ?」
「悪いかよ」
依央はむっとした顔で、そのまま家の中に足を踏み入れてきた。そのまま彼を中に招き入れたはいいものの、やはり体力が限界に近づいてきていて、私はふらりとしゃがみ込んだ。
「え、お前、大丈夫?」
「うん……」
「昨日、あのあと何か食べたか?」
首を横に振ると、彼はため息をついた。呆れた、とでも言いたげな顔をしながら、私の身体を支えてテーブルの前に座らせてくれる。
けれど、文句を直接口に出して言うでもなく、彼は手に持ったビニール袋からゼリー飲料を4つ取り出して私の目の前に並べた。いつもより多い個数のそれに、依央からの心配の念が感じられる。
私がゼリー飲料のひとつに手をつけたのを見届けてから、彼はパックに入った唐揚げ弁当の包みを外した。
祥平といるときほどの安心感はないけれど、私は依央が形作るこの空間がわりと好きだった。


