性、喰らう夢





 あの後の放課後、帰宅してしばらく経ったころ、依央が私の古臭いアパートに、コンビニの袋を持ってやってきた。

 嫌じゃなかったら上げて欲しい、と彼が言うので、私は二つ返事でそれを受け入れた。断る理由がなかった、というのが第一の理由で、依央の持つコンビニの袋からゼリー飲料が覗き見えた、というのが第二の理由だった。

 あんなことを言った後で、彼がこんなことをする理由がわからなかった。

 彼はテーブルの上にコンビニのビニール袋をがさりと音を立てて置くと、その中からゼリー飲料を2つ取り出して、こちらに投げてきた。私がいつも飲んでいる味ではなかったけれど、彼の好意がなぜだか嬉しかった。

 彼はこちらにゼリー飲料を投げるばかりで、それを飲めだとか、そんなことは何も言わなかった。ただ彼は、私の向かい側に座って、その袋の中から冷たいかけうどんのパッケージと割り箸を取り出し、自分の前に置いた。



「依央、これ良いの?」



 私はゼリー飲料のパッケージと依央の顔を見比べながら、恐る恐る尋ねる。

 彼はうどんのパッケージを剥がしながら、ああ、と気の抜けた返事をした。



「祥平、もう来ないんだろ」



 昨日、私を置いて帰って行った祥平の顔が思い出される。一応、昼休みに話したことについて、依央は依央なりに心配してくれているらしかった。



「……うん」



 口の中に、冷たいゼリーの感触が広がる。