あの噂に隠された運命に涙する

「あたしのスペアは、高見橋くんだよね? でも、あたしと瓜二つの姿じゃ……」

そこまで弾き出したところで、ようやくあたしは高見橋くんが言いたいことが分かった。

「これから、俺は神楽木さんの姿になる」
「あたしの姿に?」

高見橋くんの一声に、あたしはやや、困惑気味に尋ねる。

「神楽木さんがゲームをクリアするまでは、俺が神楽木さんとして生きていくことになる」
「でも、高見橋くんは……?」
「俺はしばらく、病気で長期療養中ってことにしている」

つまるところ、高見橋くんがしばらくの間、あたしに成り変わって生きていくということだ。
幽霊状態。
死後の世界に片足突っ込んでいる以上、どうしてもスペアの高見橋くんの協力が必要になってくる。
そこは分かっている。
だけど、だけどね……。
あたしは中学の入学式で、高見橋くんに一目ぼれした。
それからずっと、高見橋くんに片思いしている。
それなのに、これからゲームをクリアするまでの間。
高見橋くんが、あたしとして生きていくことになるなんて……。
その周りで、幽霊として、ふわふわ浮いているなんて……。
これはもしや、まさかの急接近フラグ!

「って、違う違う! そんなことないから!」

あたしは首をぶんぶんと横に振って、考えていたことを頭の中から追いやった。