あの噂に隠された運命に涙する

家に帰る頃はもう、日が沈む間近だった。
看護婦さんたちが心配していると思うし、そろそろ、病室に戻らないと。

「今日はありがとう。また、来週」
「うん。僕たちの方も、それまでにテレポートをコントロールできるようにがんばるよ」

有村くんの優しさに、心がぽかぽかと温まる。
まだ、出会ってひと月も経ってないけれど、まるで昔からの友達みたい。
何故だか、少しむず(かゆ)い。
有村くんとジュラルミン星人さん。
これからどんな関係になれるのか、大切に育てていきたいものが、もうひとつ増えた気分だった。
急いで家に帰ると、あたしたちはすぐに現実世界に戻る。
病室で一息つくと。

「神楽木さん、いかがでしょうか?」

ちょうど、担当の先生と看護婦さんたちが入ってきた。
あたしは相変わらず、姿が見えないので、高見橋くんにすべてを任せている。
病気の簡単な経過説明と検査をした後。
担当の先生たちは、いつもと同じように出ていく。
代わり映えない日常の焼き直し。
だけど、平凡な病院生活からは想像もつかない、あまりにも濃い時間を送ったからか。
現実世界の出来事が、少し味気ない感じがする。
味気ないといえば。

「夕ごはん、食べてくれば良かったかも……」

幽霊の身だから、今日も目の前の夕ごはんを食べられない。
それだけが、今日の心残りだった。