あの噂に隠された運命に涙する

『それはそうと、芽衣様。皆様、芽衣様争奪戦に本腰を入れてきました。そろそろ、大きなイベントが発生しそうです』
「本腰?」

意外なメッセージに、あたしは目を瞬かせる。

『芽衣様の現実世界の身体が、ゲーム内で仮死状態になっていることはご存知ですね?』
「……うん」

あたしは、スポナビさんの言いたいことがよく分からなくて首をかしげる。
すると、スポナビさんは言葉を探すようにメッセージを表示させた。

『ゲームをクリアするまでは、このままゲーム内にあります。ですが、今回のイベントをクリアして世界を発展させれば、エンディングに向けたルートが選べますよ』
「エンディングに向けた!?」

思わず、声が高くなる。
そんなあたしの気持ちを汲み取ったのか、スポナビさんは詳しい説明をしてくれた。

『はい。ジュラルミン星人様がテレポートをマスターして、世界発展のきっかけを作ります。その上で、芽衣様争奪戦をクリアする。そうすれば、おのずとエンディングに向けたルート選択が表示されます』

なるほど、と要領を得る。
つまり、今回の争奪戦はルート分岐点。
このイベントをクリアしたら、エンディングに向けたルートを選べるということだ。
『エンディングに向けたルート』というのは、ゲーム内で特定のキャラクターとの恋愛関係を深めるための物語の分岐のこと。
同じキャラクターでも、『告白ルート』や『親友ルート』などがあるんだ。
ルート選択をして、エンディングを迎えて、このゲームをクリアする。
そうすれば、あたしは現実世界で、完全に生き返ることができるはずだ。

「よし、がんばるぞ!!」

目標が定まって俄然(がぜん)、やる気がみなぎってくる。
熱意をたぎらせていると、スポナビさんの慌ただしいメッセージが浮かび上がった。

『特殊イベントが発生しました! 10日後の登校イベント中に起きる、芽衣様争奪戦に関わりますか?』

これが新たな始まり。
あたしは決意を込めて、『はい』の選択肢に触れたんだ。