あの噂に隠された運命に涙する

「ああ。スペアは、ドッペルゲンガーのようなものだ。そして、高見橋家は代々、スペアとしての使命をまっとうする家系なんだ」
「使命?」

高見橋くんが語った内容に、あたしは目をぱちくりと瞬かせる。

「スペア総合病院。この病院で亡くなりそうになった時、『スペアに会いたい』と願うと、自分と瓜二つ、つまり、そっくりな姿をした分身、『スペア』が現れて、願いを叶えてくれる」
「……それって」

高見橋くんの言葉は、あたしの瞳を揺らがせるのに十分すぎた。

「この噂は、高見橋家が流したものなんだ。そして、噂を信じた人たちを『スペア』として導くのが、高見橋家の使命。だから、高見橋家の者はスペア特有の能力、変身能力を持っている」
「スペア特有の能力……」

思わぬ使命に、あたしの心臓は早鐘のように打った。

「じゃあ、あたしの命を救ってくれたのは、あの噂を流した高見橋家の人たちってことになるんだね」
「そうかもしれないな」

日常のしがらみから解き放たれてよく伸びたあたしの声と、優しい高見橋くんの声が行き交う。
つまり、あたしが入院している、スペア総合病院は、高見橋家の人が経営者として関わっているということになる。
あの日、高見橋くんと出会ったのは偶然じゃなかったんだ。
真実という光が、きらきらと身体をまとわりつく感じがした。