あの噂に隠された運命に涙する

「郁斗、本当にどうしたの?」
「……本当に生きている。生きているんだ!」

ずっと、ずっと、会いたかった有村くんのお母さんが今、彼の目の前にいる。
手を伸ばせば、すぐに触れられる距離にいる。
そう考えると、無性に胸に迫ってくるものがあった。

「あ、その、こんにちは。あたし、神楽木芽衣といいます」
「神楽木士稀です」

あたしがテンパっていると、高見橋くんはぺこりと頭を下げた。

「双子なのね」

有村くんのお母さんはあらあら、と嬉しそうに笑みを深める。
本当は違うんだけど。
この世界では、高見橋くんはあたしの双子の妹ということになっているんだ。

「二人とも僕の友達で。……その、今日、一緒に遊んでいたんだ」
「そうなの。郁斗が、お友達を連れてくるのは久しぶりね」

有村くんのお母さんは微笑んで、あたしたちをじっと見つめてくる。
そこでジュラルミン星人さんの存在に気づいた。

「郁斗様の母上、お初にお目にかかります。我は禁断の機械兵器、ジュラルミン星人。今日から、転移者である郁斗様の身を守る従者になります」

ジュラルミン星人さんは、有村くんのお母さんの前でひざまずいた。
その宣言に、目をしばたかせた後。

「ジュラルミン星人さん、郁斗のことをよろしくお願いしますね」

有村くんのお母さんは目線を合わせて、小さく微笑んだ。
心温まるような笑顔が、その優しさを体現しているように見える。