あの噂に隠された運命に涙する

それは作り話みたいな世界だった。
オレンジ色の夕焼けの空を、ドラゴンさんたちが飛んでいく。
雨のしずくが、雨よけバリアによって弾かれ、空気ぜんぶに溶けているみたい。
まるで、おとぎの国に迷い込んだ気分だ。
一度、家に帰り、お母さんに事情を話した後。
あたしたちは以前、有村くんが住んでいた家に向かった。
住宅街を抜けると、やがて一軒家に突き当たる。

「ほんとにあった……」

有村くんは懐かしむようにつぶやいた。
本来なら存在しないはずの家。
五年前の事故で、有村くんの両親が亡くなったことで取り壊されているから。
現在、彼が身を寄せているのは伯父さんの家だ。

「父さんと母さんは本当に、この世界では生きているんだ」

一呼吸置いてから、有村くんは意を決してインターフォンを鳴らす。
すると、すぐに「はい」と女の人の声が返ってきた。

「……た、ただいま、母さん」
「えっ……? 郁斗、どうしたの? インターフォン、鳴らして」
「あ……ちょっと」

その反応に、有村くんはたじたじになる。
もしかしたら、別の人が住んでいるかもしれない。
その懸念があったのだろう。

「郁斗、おかえりなさい」

ドアを開けて出てきたのは、有村くんに似た雰囲気の女の人だった。

「母さん!!」

その瞬間、有村くんはついに堪えきれなくなって、有村くんのお母さんに抱きついていた。