あの噂に隠された運命に涙する

「おい! ブラックドラゴン、抜けがけするな! 最初に芽衣様に声をかけたのは俺だぞ!」

レッドドラゴンさんが怒りを込めて、ブラックドラゴンさんに食ってかかっていた。

「芽衣様、こっちだ! 俺のもとに来い! 俺の嫁になれ! そうすれば、新婚旅行は『笑いが止まらなくなる毒キノコ入り、激辛オムライスを食べながら、太陽に突っ込みツアー』に行けるぞ!」

レッドドラゴンさんの告白に、あたしはたじたじになる。
『新婚旅行』は、結婚した二人が結婚後、初めて一緒に行く旅行のことだけど。
その旅行先が太陽って、めちゃくちゃ危険な感じがする。
だって、太陽に突っ込んだら、消滅しちゃうよ!!
うわああああああああ!!
テンパっていると。

「……ふむ、なんと野蛮な」

レッドドラゴンさんの剣幕に、ブルードラゴンさんは呆れたようにため息を吐く。

「芽衣様、このような輩は無視して、私と一緒に行きましょう。私のもとにくれば、素敵な思い出づくりができます。なにしろ、新婚旅行先は『氷づけの塩辛いオムライスを食べながら、北極の深海で漬物づくりツアー』ですから」

ブルードラゴンさんはきまじめだ……って、ちょっと待って。
北極の深海って、北極の深い海底のことだよね。
ほとんどの生き物は生きられないって聞いたことがある。
そんなところに行ったら、死んじゃうよ!!
しかも、漬物づくりツアーって一体。
頭が大混乱を起こしかけていると。