あの噂に隠された運命に涙する



妖精警察署を出ると、いつの間にか、雨が降り出していた。
小雨といった程度だが、大慌てで来たから、傘は持ってきていない。
スマホで連絡して、お母さんに帰りが遅くなることは伝えている。
だけど、心配しているかも。
早く帰らなくちゃ。
でも、傘がない。

「うーん。どうしよう」

思考が堂々巡りになっていると。
スポナビさんの華やかなメッセージがふわりと舞い降りた。

『芽衣様、ご安心ください。はい、雨よけバリア、ウルトラスペシャル、最強傘、究極レア進化――』

……思えば、もうすぐ梅雨の時期だ。
木々から、夏の匂いを感じるようになった。
ぬれた地面に映り込むのは、夕日に灯り始めた町の光。
とおせんぼのように立ち塞がるのは、勇ましい三体のドラゴンさんたち。
そして、肌にはりつくような、ぬるくしっとりとした空気。
どれもこれもが梅雨らしく、季節を胸に感じる。

「……って、なんで、ドラゴンさんたちが立ち塞がっているの?」

例外中の例外に、あたしは思わず、目を見開いた。
ドラゴンさん。
ドラゴンさんだ。
三体のドラゴンさんたちは、あたしたちの行く手を阻むように立ち塞がっていた。

「地球に似た、乙女ゲームのような世界は、どこに……?」

ぐるぐると着地点のない思考だけが、ぼんやりとした頭を巡る。
梅雨の時期には、ドラゴンさんたちが目の前を立ち塞がるものだっただろうか。
それが、今の時期の風物詩というものだっただろうか。
いやいや、そんなわけはない。
そんなおかしいな夏の現象など、聞いたこともない。