あの噂に隠された運命に涙する

『異世界に転生や転移する際は、神様などに導びかれることが多いですよ。きっと、芽衣様が運命の女神だと名乗れば、話はスムーズに進むはずです。転生特典もそこで与えれば、なお、よろしいかと』
「女神……?」

自信満々にドヤ顔するような巨大メッセージ。
もはや嫌な予感しかなく、鼓動が早くなる。

『では、作戦決行は夜にしましょう。そうすれば、誰かに見られることはないはずです。こう見えても、わたくし、ひきこもり箱入りコーデマスターと呼ばれています。絶望的にファッションセンスがないとよく言われますよ』

ひきこもり箱入りコーデマスターって一体?
頭の中で何とか整理して理解しようとしても、感情が追いつかない。
それなのに……。
疑問が消えないまま、スポナビさんはどんどん話を進めていく。

『そうと決まれば、病室に戻って、女神コーデのファッションショーを開催しましょう。芽衣様と士稀様の双子の女神チェンジは、このわたくしにお任せください』
「えっ……? 俺も!?」

その言葉に反応して、高見橋くんが嫌そうにたじろぐ。

『当たり前ではないですか。士稀様は、芽衣様のスペアなのですから、当然、道連れ決定です』
「道連れ!?」

高見橋くんは困惑した顔で言った。
うん、分かるよ。
その気持ち、すごく分かる。
あたしも同じ気持ちだから。
正直、スポナビさんの女神コーデのこだわりが分からない。
ツッコミたいところが山ほどある。

「あの……、スポナビさん。やっぱり、このままの格好で――」
『強制イベントが発生しました!』

言いかけたあたしの声を、スポナビさんのメッセージが追い抜いた。

『病室に戻って、ただちに女神コーデのファッションショーを開催します! 強制テレポート発動まで、あと5秒!』
「強制テレポート!?」

ぎょっとしたあたしはスポナビさんを凝視する。

『4、3、2、1……』

スポナビさんのメッセージは赤く点滅していた。
まるでカウントダウンを告げるように。
猛スピードで、数字の表示が切り替わる。

『0……はい。お待ちかね、強制テレポート発動ーーーーっ!!!!』
「めちゃ早――」

止める暇もないまま、あたしの意識は……そこで不自然に途切れた。