あの噂に隠された運命に涙する

高見橋くんと二人きり。

改めて、そう思った途端、温かい空気が流れる。

二人きり。

もう一度、脳内で繰り返す。
その言葉は数年間、あたしの辞書になかったものだ。
その事実が体内に溶け込んでくる。
恋って大変だ。
二人きりになった瞬間、こんなに高見橋くんが神々しく見えるなんて。
隣で、高見橋くんがふわりと花が咲いたかのように笑っている。
その笑顔を見ているうちに、あたしの中にある決意が芽生えた。

「あのね、高見橋くん」
「ん?」

あたしの言葉に、高見橋くんがきょとんと首をかしげる。

「あたし、亡くなった人に『スムージーラリア』に来てほしい。たとえ、地球でつらいことがあっても、『スムージーラリア』なら、自分らしく生きられると思うから!」

未練や後悔。
それらを抱えたまま、この世を去った人たちはきっと、やりきれなかっただろう。
そう思うと、胸の中がむずむずして、いても立ってもいられなくなってしまう。

「高見橋くん、もう一度、探そう。きっと、『スムージーラリア』に来てくれる転移者、見つかると思うから!」

言い終わると同時に、笑顔になる。
わき上がってくる気持ちをそのまま言葉にしていることが、すごく心地よくて嬉しい。

「行こう!」
「ああ」

転移者を求めて、あたしは再び、病院内を探し回る。
その後を追いかける形で、高見橋くんが駆け出した。