あの噂に隠された運命に涙する

「あたしと同じように浮いている人は、幽霊だと思うけれど……」

あたしはぐるりと見回す。
幽霊状態だと壁をすり抜けたり、ふわふわと浮くことができる。
空を飛ぶという不思議体験は、想像を越えるような体感と爽快感を感じられた。
ふわっと足が宙に浮く感覚を堪能していると。

「神楽木さん」
「えっ?」

高見橋くんの呼びかけに、あたしは間の抜けた声を出してしまう。

「俺、神楽木さんに踏み込みすぎている?」

思わぬ質問に、あたしは目をぱちくりさせる。
すると、高見橋くんは気まずそうに頬をなでた。

「俺、人との距離感とか分からなくて、もしかして近づきすぎているのかもって思って」
「ええっ!? そんなことないよ!!」

高見橋くんの言葉に、あたしは慌ててぶんぶんと首を横に振る。
そして、焦ったように口走った。

「あの……、あたしの方こそ、距離感、近づきすぎてごめんなさい。その……はしゃいでしまって……。あたし、一人っ子で、ほんとに妹ができたみたいだったから……」

どう答えたらいいのか分からず、あたしは言葉尻をにごしてしまう。
すると、高見橋くんは不思議そうに首をかしげた。

「神楽木さんは一人っ子なの?」
「あ……はい」

高見橋くんの疑問に、あたしは慌てふためいて答える。

「そっか。じゃあ、俺と同じだ。俺も一人っ子なんだ」

きらきらと輝く、星のような瞳が、あたしをまっすぐにのぞき込む。
高見橋くんの今の姿は、あたしとそっくりだ。
だけど、その表情やかもし出す雰囲気は、あたしが知っている高見橋くんと同じように感じられた。