あの噂に隠された運命に涙する



「神楽木姉妹、早く席につけ」

教室に入ると、先生の声とみんなの視線を浴びる。

「話は聞いているぞ。モブカエルたちを救ったようだな。それに免じて、遅刻は大目にみよう」
「先生。どうして、それを?」

うんうんとしきりにうなずく先生に、あたしは問い返す。

「モブカエルたちが、テレパシーで先生に事情を伝えてきたんだ。恐らく、救ってもらった恩返しをしたかったのだろうな」
「テレパシー!?」

モブカエルさんたちの能力、すごすぎる。
あたしの驚きに、先生は納得したように何度もうなずく。
だけど、クラスのみんなの目はあたしたちに集中していて、とても居心地が悪かった。
これからどうしたらいいんだろうって、不安がいっぱい。
視線地獄に思わず、くじけそうになったけど。

「神楽木さん、行こう」

不意に飛んできた言葉に、あたしはドキッと目を開く。
高見橋くんが、あたしの手をひっぱって歩き始めたんだ。
物怖じせず、まっすぐ席に向かう高見橋くん。
今は小さな光でも、いつか立ち向かう力となる……そんな自信をくれる背中。
そんな彼の足取りは、どこまでも迷いがなかった。

すごい。
高見橋くんは、まるで太陽みたい。

それぞれの席についても、胸がドキドキしていて、額に汗がにじんでいるのが分かる。
これから久しぶりの授業。
ずっと入院していたから、授業についていけるかな。
言葉にできない不安を抱えていると、高見橋くんはチラっとあたしを見る。