あの噂に隠された運命に涙する

息を整えながら、校門をくぐり、昇降口に入ったその時。

「ふふっ……でごさる」

突如、渋い男の人の声がした。

「だ、だれ……?」

あたしは辺りをきょろきょろと見回す。
しかし、近くには、あたしたち以外いない。
訝しげていると。

「にんにん。拙者たちはカエルでござる。しかーし、ただのカエルとは違う!」

どうやら、声の出所は、近くにいるカエルさんたちのようだった。

「ただのカエルとは違う……?」

あたしはまじまじとカエルさんたちを見つめる。
確かに、見た目は普通のカエルと違う。
みんな、頭にはちまきを巻き、『芽衣様、ラブ』と書かれたタスキを掲げている。
しかも、何処から調達してきたのか、応援用のペンライトまで持っている。
あまりにも怪しすぎて、昇降口自体が必然的に避けられているようだ。
それにも関わらず、カエルさんたちは当然のようにふんぞり返っていた。

「拙者たちは、カエルの中のカエル。ずばり、モブカエルである!」
「モブカエル!?」

てへと頭をたたくカエルさんたち。

「拙者たちはいかなる時も、推しの芽衣様を堪能したい! 芽衣様、最推し……。尊いっ」
「最推し……? 乙女ゲームのような世界を思い浮かべたのに、どうして電柱やカエルさんたちが攻略対象に含まれているの?」

カエルさんの大胆な告白に、あたしは目を白黒させる。
わたわたと戸惑っていると、スポナビさんが助け船を出してくれた。