あの噂に隠された運命に涙する

「スペア総合病院。この病院で亡くなりそうになった時、『スペアに会いたい』と願うと、自分と瓜二つ、つまり、そっくりな姿をした分身、『スペア』が現れて、願いを叶えてくれる……？」

そんな噂話が、ネット上の間で、まことしやかに囁かれていた。

スペア……？
何だろう。
ドッペルゲンガー。
つまり、自分とそっくりな姿をした分身のようなものなのかな。

ドキドキが半分。
動揺が半分。
病院の個室で、そんな気持ちを抱えながら、一つ深呼吸。
さらにスマホを操作する。
その噂話には、さらなる突拍子のない続きがあったからだ。

「スペア病院、蘇生特典。位置情報ゲーム、『奇跡コネクト』。スペアがあなたに、現実世界と異世界が融合した、新しいゲーム体験を提供します。このゲームをクリアすると、どんな病気やケガでもたちまち完治します……。それって、不治の病でも……治っちゃうってことだよね！」

あたしはベッドの上で、ぱあっと目を輝かせる。
位置情報ゲームとは、スマートフォンなどのGPS機能を活用して、現実世界の場所とゲームを連動させて遊ぶゲームのことだ。
プレイヤーは実際の場所を移動することで、ゲーム内での進行やイベントが起こるなど、現実とゲームの世界が融合した体験を楽しめる。
つまりは、どういうことかというと……。
あたしはゲームの誘惑に抗えない。
これに尽きる。
あたしが幼い頃からしてきたゲームは数知れず。
生粋のゲームマニアだ。
将来の夢は『ゲームを作る人』。
そう宣言するほど、ゲームが大好きなのだ。
そんなあたしがまだ、知らない未知のゲーム、『奇跡コネクト』。
この病院で死にかけることで、あたしはその未知の衝撃と感動に会える。
そう思えば、死の恐怖よりも、未知のゲームへの期待が勝った。

このゲームがしたい。
そして、つかめないはずの未来をつかみたい。

待っているだけは、今日でおしまい。
未来を怖がるより、今の幸せをつかむ。
誰だって、幸せになりたいから生きている。
一方的な死の宣告じゃなくて、今度はちゃんと自分で生きる選択を選びたい。
そう思えば、もう何も怖くないと思った。