あの噂に隠された運命に涙する

「そういえば、この状況ってどうしよう」

あたしは困り顔で、高見橋くんをまじまじと見つめる。
高見橋くんは相変わらず、あたしの姿のままだ。
もし、この状態でお母さんに遭遇したら、大変なことになる。
あらぬ誤解を生んでしまうかもしれない。
でも、その不安はアルバムを発見したことで、早々に解消した。

「あ……あたしとそっくりの女の子が写っている」

あたしはアルバムをめくりながら、ぽつりとつぶやく。
以前も目にした思い出の写真たち。
ぜんぶ、覚えている。
それなのに、あたしの隣にはいつも、あたしとそっくりな女の子がいた。
小学校の入学式。
春の遠足。
運動会。
家族旅行。
すべての写真に共通しているのは、あたしたちの弾ける笑顔。
見ているあたしの方が楽しくなってくる。
アルバムの中には、この世界に来なかったら、知ることがなかったかもしれない時間が確かにあった。
思い出はきっと、たくさんあった方がいい。
だって、高見橋くんがくれた、たくさんのもの。
すべて、あたしの幸せの源だから。
さらにアルバムの中を探っていると、そこには双子の赤ちゃんの写真があった。
くるりと裏返すと、そこにはあたしの名前と高見橋くんの名前が書かれていた。

「神楽木芽衣、神楽木士稀。双子の姉妹……。この世界では、あたしと高見橋くんは双子の姉妹なんだ……」
「何だか、不思議な感じだな……」

あたしの隣で、高見橋くんが食い入るように写真を見つめている。
これって、もしかして、いわゆる『パラレルワールド』のようなものかな。
そう思った瞬間、さっと何かが吹き抜けたような気がした。
別の世界線では、あたしと高見橋くんは『家族』というつながりで結ばれているんだ。
感慨にふけていると。