あの噂に隠された運命に涙する

いろいろと大変な状況に放り込まれたけれど……。
あたしにとっては、これは未来を変える、絶好のチャンスだ。
まっすぐ、前を向こう。
もう、苦しいことに悩むのはやめたい。
今はただ……生き返るためにやれることをやろう。

あたしはそう決断すると改めて、うーんと思案を巡らせる。

最初にやるべきことは、新しい世界を創ること。
素敵な世界でないと、ゲームトリップ、つまりゲームの世界への転移者は来ないと思うから。

でも、肝心の世界創造の案が宙ぶらりんのままだ。
みずみずしい空気を胸いっぱいに吸い込んで、あたしは開放感に伸びをひとつ。
くるりと振り返り、高見橋くんのもとに歩み寄る。

「高見橋くん。これから創る世界、どんな世界にしたらいいのかな?」
「神楽木さんのこれからの毎日が、素敵な日でいっぱいになるような世界でいいんじゃないか」

返ってきた答えは、あまりにもまっすぐ過ぎた。
もとより、高見橋くんとともに暮らすと決めた以上、がんばらないなんて選択肢はないけれど。
それでも彼に、こんなに熱烈に求められたなら、期待以上に応えたい。
だって、高見橋くんがいるだけで、世界はキラキラするから。

「素敵な日でいっぱいになるような世界……」

それは、あたしの記憶の中の『ゲーム』とぴったり重なった。