あの噂に隠された運命に涙する

「お母さん、心配かけてごめんね。あたしはもう、大丈夫だよ」

高見橋くんが同じ言葉を繰り返すと、お母さんは安堵したように息を吐いた。

「芽衣ちゃんが大変な時に……お母さん、ずっとそばにいてあげられなくてごめんね。面会の時間が制限されていなかったら、もっともっと、芽衣ちゃんのそばにいられたのに……!」

お母さんの真剣な剣幕に、高見橋くんが少し困り顔になる。
そんな二人のやり取りを、あたしはただ、黙って見つめていた。
幽霊になったあたしには何もできない。
現世に干渉できない。
それでも、スペアの高見橋くんには、あたしの姿が見えるし、声を届けることもできる。
何だか、不思議な気分だ。
しみじみとしていると、お母さんは「また、来るわね」と病室を後にしていた。

「……それにしても、死にかけたじゃなくて、単純に倒れたってことになっているのかな?」

あたしは改めて、置かれた状況を分析する。
つまり整理すると、こういうことだ。
まず、あたしは死にかけた。
だけど、死ぬ前に『スペアに会いたい』と願ったから、幽霊状態で現世に留まることができた。
生と死の狭間にいる存在。
でも、死の運命を変えるためには、『奇跡コネクト』のゲームをクリアしなくてはいけない。
そして、その間、スペアの高見橋くんが、あたしに成り変わって病院生活を送ることになった。
ゲームのクリア条件とか、他にもあるけれど、おおむね、判明したのはこんなところだ。