あの噂に隠された運命に涙する

幽霊状態という混沌に放り込まれてから、数日が経った。
あれから入れ替わり立ち代わり、あたしの病室には人の出入りがあった。

死にかけたあの日。

あたしは相当、危険な状態だったみたい。
もっとも、あたしはその間の意識がなかったので、はっきりとは分からないのだけど。
助かったのは奇跡だと言う先生もいた。
涙を流して喜んでくれる看護婦さんもいた。
同じクラスの友達も、学校帰りに病院までお見舞いに来てくれた。
そして、何よりも……。

「芽衣ちゃんーー!!」

お母さんが毎日、心配そうに、病室に駆けつけてくれたんだ。

「今日も元気そうで良かったーーっ!!」
「うわっ!」

お母さんは猛ダッシュで、高見橋くんの身体をおもいっきり抱きしめてしまう。
問答無用。
しかもそのまま、声を上げて泣き始めてしまった。
実は、あたしは小さい頃から身体が弱くて、よく倒れていた。
その影響もあってか、お母さんは意外と過保護だったりする。

「芽衣ちゃん、あれから、本当に大丈夫!? また、倒れていない……?」

お母さんは怒涛の勢いでまくし立てる。

「症状は安定しているって、先生が言っていたけれど……。お母さん、心配で心配で……っ!」
「えっ……? 症状が安定……?」

初耳ばかりの告白に、あたしは呆然とする。
どうやら、そういう流れになっているみたいだ。