この手に愛と真実を〜クールな検事の一途な想い〜【書籍化】

「不正アクセス? 聞いてないな」

凜香の言葉に、社長は眉をひそめた。

「しかも私が把握していないのに、既に警察が動き出していることが問題だ。深月さん、各企業にヒアリングしてくれる? 最優先事項で進めて、まとまり次第、報告してほしい。今日の私の秘書業務は第二秘書に任せるから、君はそっちに専念して」
「かしこまりました。ただちに取りかかります」
「頼む」

しっかりと頷き、凜香はすぐさま秘書室に戻る。
関連会社のリストを広げて、片っ端から電話をかけていった。
不正アクセス被害にあったのは事実かと尋ねると、どこも同じような回答が返ってくる。

『事実です。すぐに本社の情報セキュリティー管理部に報告しました』
「それはいつのことでしょうか?」
『六月初旬です』
「一カ月前……」

その一カ月の間に、社長が知らないまま警察が動き出した。
とんでもない話だと、凜香はその足で情報セキュリティー管理部のオフィスがあるフロアに向かった。