この手に愛と真実を〜クールな検事の一途な想い〜【書籍化】

「礼央さん、コーヒーどうぞ」
「ありがとう」

風呂上がりにソファで本を読んでいた礼央の前に、凛香がカップを置く。
その手を礼央はそっと引いて、凛香を抱き寄せた。

「礼央さん?」
「……矢島のせいで、ただいまのキスができなかった」

抱きしめた凛香の耳元でボソッと呟く。

「えっ、それで拗ねてたの?」
「当然だ。あいつめ、俺の凛香に馴れ馴れしく……」
「ふふっ、なんだか可愛い」

そう言うと顔を上げ、凛香はチュッと礼央にキスをした。
途端に礼央は顔を真っ赤にして仰け反る。

「おかえりなさい、礼央さん」

にこっと笑いかける凛香に、ようやく礼央も笑みを浮かべた。

「ただいま、凛香」

今度は礼央が、優しく甘いキスを贈る。
ギュッと抱きついてきた凛香の頭をなでて、温もりと幸せを噛みしめた。

「凛香」
「なあに?」

顔を上げた凛香に思わず笑みをこぼしてから、礼央はそっと凛香の左手を取る。

「指輪がいるな」
「え?」
「俺の愛の証を、ここに」

薬指をそっとなぞると、凛香は、はにかんでうつむいた。

「凛香の綺麗な指に似合う指輪、早速探しに行こう」
「はい。ありがとう、礼央さん。すごく嬉しい」
「最高級のダイヤモンドの指輪。あとは、矢島が近づくとアラートが鳴って、触れた途端にビリビリ電流が流れるブレスレットも」
「は? なあに、それ」
「虫よけのブレスレットとか、あるだろ? そういうやつ」
「売ってませんから、そんなの」
「じゃあ作らせよう」
「もう、礼央さん!」

凛香は正面から礼央に抱きついた。

「そんなに嫌? 矢島さんがここに来るのが」
「嫌じゃないけど、嫉妬する」
「私の心は礼央さんにしかないのに?」
「……ごめん。みっともないな、俺」
「ううん、そんなことない。じゃあ、これならどう?」

そう言って凛香は、いたずらっ子みたいな表情で礼央に笑いかける。

「矢島さんがここで食事したあとは、礼央さんはなんでも私にひとつお願いごとができるの。それならいい?」
「俺が、凛香にお願い? なんでも聞いてくれるのか?」
「うん。肩揉みでも、マッサージでもいいよ。好きなおつまみ作ったりでもいいし」
「じゃあ早速、今日の分のお願い、してもいいか?」
「どうぞ?」

澄ました顔をする凛香を、礼央は一気に抱き上げた。

「ひゃっ、なに?」
「今は言わない。ベッドの中でお願いする」
「え、あの、どういう……」

戸惑う凛香を抱いたまま、礼央は寝室へと向かう。
大きなベッドに下ろすと、すぐさま凛香を組み敷いてグッと顔を寄せた。

「凛香、朝まで俺に愛されて」
「えっ、あの」
「お願い、聞いてくれるんだろ?」
「それは、そうですけど、でもあの」
「うるさい口は塞ごう」

そう言うやいなや、礼央は熱く凛香に口づけた。
凛香の手を握り、指を絡めながら何度もキスを繰り返すと、やがて凛香の身体から力が抜ける。
頬を赤く染め、トロンと熱を帯びた瞳で色っぽい表情を浮かべる凛香に、礼央は身体をゾクッと震わせた。

「……これなら毎日矢島を呼んでやってもいいな」

悪魔のような呟きは、凛香の耳には届かない。
代わりにどこまでも甘い愛のささやきが、ひと晩中凛香の胸を幸せで満たしていた。

(完)