この手に愛と真実を〜クールな検事の一途な想い〜【書籍化】

「おかえりなさい」

笑顔で玄関まで出迎えに来た凛香に、礼央は頬を緩める。

「ただいま」

いつもなら、すぐさま抱き寄せて頬にキスをするところだが……。

「凛香ちゃん、ただいまー」
「矢島さん、お疲れ様です。どうぞ上がってください」
「はーい。お邪魔しまーす」

そそくさと靴を脱いで上がる矢島の背中を、礼央は忌々しく見送る。

(だいたい、ただいまってなんだ? ここは俺と凛香の部屋だぞ)

仏頂面でリビングに入ると、矢島が部屋を見渡してまたしても凛香に話しかけていた。

「なんか雰囲気変わったね。前は殺風景だったのに」
「私の荷物を運んだんです。住んでたワンルームマンションを引き払ったので」
「そっかー。これからはここが夫婦の愛の巣ってわけね。そのうちベビーベッドも増えてたりして」

えっ、と凛香は赤くなった頬を手で押さえている。

「優しいママになるだろうなー、凛香ちゃん。って言うか、朝比奈さんはどうなるんだろ? そんなコワモテで、いないいないばあとかしないでくださいよ?」
「うるさい! それ以上言ってみろ、矢島。今すぐつまみ出してやる!」
「はーい。凛香ちゃん、お皿運ぶよ」

いそいそとキッチンに凛香を追いかけていく矢島に、礼央はひたすら睨みを効かせていた。