「凜香、社長にプロポーズされていたのか?」
その日の夜、リビングのソファでコーヒーを飲みながら礼央が切り出した。
「あ、はい。誘拐される前に社長と一緒に食事をしていて、その時に『結婚を考えてほしい』と言われました。でも結局そのあとあんなことになって、考えられないまま社長の方から断られちゃいましたね」
ほんの少し苦笑いを浮かべてから、凛香は手元のカップに視線を落とす。
「でも私、即答しなかったのが私の答えだったと思います」
「どういう意味だ?」
「結婚したいと思える相手からプロポーズされたら、嬉しくてその場ですぐに『はい』って返事をしちゃうと思うんですよね、私。なんて返事しよう、とか、本当の私の気持ちは? なんて考える暇もなく。ふふっ、きっとそうなるだろうなあ、私の性格なら」
「……試してみるか?」
え?と凛香が顔を上げた。
礼央は正面から真っすぐ射貫くように、凛香を見つめる。
「凛香、俺にとって君以上に心惹かれる相手はいない。俺の心をこんなにも揺さぶり、狂おしいほど焦がれさせる女は君だけだ。俺を癒やし、温かく包み込んでくれる、優しくて可愛い凛香。胸が締めつけられて切なくなるほど、俺は君を心から愛している」
そして涙で潤んだ凛香の綺麗な瞳を見ながら、はっきりと告げた。
「結婚しよう、凛香」
目を見開いた凛香の頬に、大粒の涙がポロポロとこぼれ落ちる。
「考えずに返事しろ」
「はい」
「……で、返事は?」
「だから、はい!」
「え?」
「結婚してください、礼央さん」
「…………え?」
「え、じゃなくて! 私にも礼央さんしかいないの。いつもそばにいてくれて、ピンチの時は助けてくれて、大きな腕の中で守ってくれる。私、礼央さんとずっと一緒にいたいです。この先も、ずっと。私と結婚してください」
礼央はようやく笑顔を浮かべた。
「ああ。結婚しよう、凛香」
「はい、礼央さん」
抱きしめると、愛を込めてキスをする。
凛香の、涙に濡れたまつ毛が小さく震えた。
人生でこんなにも幸せで心しびれる瞬間があるなんて。
二人は同じ気持ちを胸に、互いの温もりを確かめながら、いつまでも抱きしめ合っていた。
その日の夜、リビングのソファでコーヒーを飲みながら礼央が切り出した。
「あ、はい。誘拐される前に社長と一緒に食事をしていて、その時に『結婚を考えてほしい』と言われました。でも結局そのあとあんなことになって、考えられないまま社長の方から断られちゃいましたね」
ほんの少し苦笑いを浮かべてから、凛香は手元のカップに視線を落とす。
「でも私、即答しなかったのが私の答えだったと思います」
「どういう意味だ?」
「結婚したいと思える相手からプロポーズされたら、嬉しくてその場ですぐに『はい』って返事をしちゃうと思うんですよね、私。なんて返事しよう、とか、本当の私の気持ちは? なんて考える暇もなく。ふふっ、きっとそうなるだろうなあ、私の性格なら」
「……試してみるか?」
え?と凛香が顔を上げた。
礼央は正面から真っすぐ射貫くように、凛香を見つめる。
「凛香、俺にとって君以上に心惹かれる相手はいない。俺の心をこんなにも揺さぶり、狂おしいほど焦がれさせる女は君だけだ。俺を癒やし、温かく包み込んでくれる、優しくて可愛い凛香。胸が締めつけられて切なくなるほど、俺は君を心から愛している」
そして涙で潤んだ凛香の綺麗な瞳を見ながら、はっきりと告げた。
「結婚しよう、凛香」
目を見開いた凛香の頬に、大粒の涙がポロポロとこぼれ落ちる。
「考えずに返事しろ」
「はい」
「……で、返事は?」
「だから、はい!」
「え?」
「結婚してください、礼央さん」
「…………え?」
「え、じゃなくて! 私にも礼央さんしかいないの。いつもそばにいてくれて、ピンチの時は助けてくれて、大きな腕の中で守ってくれる。私、礼央さんとずっと一緒にいたいです。この先も、ずっと。私と結婚してください」
礼央はようやく笑顔を浮かべた。
「ああ。結婚しよう、凛香」
「はい、礼央さん」
抱きしめると、愛を込めてキスをする。
凛香の、涙に濡れたまつ毛が小さく震えた。
人生でこんなにも幸せで心しびれる瞬間があるなんて。
二人は同じ気持ちを胸に、互いの温もりを確かめながら、いつまでも抱きしめ合っていた。



