「それで、これが移行したデータです。メッセージアプリも履歴を残してあります。クラウドに保存されていた写真や動画も移してありますよ。あと、電話帳なんかも」
「なにからなにまで、本当にありがとうございます、矢島さん」
「いいえ」
ソファに並んで座り、顔を寄せ合って新しいスマートフォンを覗き込んでいる凜香と矢島に、礼央は大きく咳払いした。
「矢島、もう帰れ」
「はあー? なんですか唐突に」
「用は済んだだろう」
「まだですよ。凜香ちゃんとおしゃべりしなきゃ」
「おまっ……」
礼央はもはや絶句する。
「奥さまって呼んだらチョップが飛んでくるじゃないですか」
「だからって、なんで……。今まで通り深月さんと呼べばいいだろう」
「だって結婚したら深月さんじゃなくなるでしょ?」
「そ、それは」
「あれ、ひょっとして俺、朝比奈さんの弱点掴んだかも。やったぜ!」
ニヤリとする矢島に、礼央はなにも言い返せない。
「これはしばらく楽しめそうだな。凜香ちゃん、新しいスマホで試しにメッセージ送ってみたら?」
「誰にですか?」
「ダーリンに。アイラブユーって」
「な、なにを……」
真っ赤になる凜香と、呆然と立ち尽くしている礼央を見比べ、矢島は愉快気に笑っていた。
「なにからなにまで、本当にありがとうございます、矢島さん」
「いいえ」
ソファに並んで座り、顔を寄せ合って新しいスマートフォンを覗き込んでいる凜香と矢島に、礼央は大きく咳払いした。
「矢島、もう帰れ」
「はあー? なんですか唐突に」
「用は済んだだろう」
「まだですよ。凜香ちゃんとおしゃべりしなきゃ」
「おまっ……」
礼央はもはや絶句する。
「奥さまって呼んだらチョップが飛んでくるじゃないですか」
「だからって、なんで……。今まで通り深月さんと呼べばいいだろう」
「だって結婚したら深月さんじゃなくなるでしょ?」
「そ、それは」
「あれ、ひょっとして俺、朝比奈さんの弱点掴んだかも。やったぜ!」
ニヤリとする矢島に、礼央はなにも言い返せない。
「これはしばらく楽しめそうだな。凜香ちゃん、新しいスマホで試しにメッセージ送ってみたら?」
「誰にですか?」
「ダーリンに。アイラブユーって」
「な、なにを……」
真っ赤になる凜香と、呆然と立ち尽くしている礼央を見比べ、矢島は愉快気に笑っていた。



