この手に愛と真実を〜クールな検事の一途な想い〜【書籍化】

ひとまずの着替えと身の回りのものをまとめた凛香を、礼央は自分の部屋へ連れて帰った。

「お邪魔します。わあ、広くて綺麗。隣の部屋と全然違うんですね」

凛香がリビングを見渡して言う。

「角部屋だけは、間取りが違うんだ。部屋も二つある。書斎と寝室、好きな方を選んで。明日には君の家具を入れるから」
「そんな、私の部屋なんていりませんから」
「そういうわけにはいかない。どっちがいい?」

礼央は書斎と寝室、両方のドアを開けて促した。

「すごい、法律の本がたくさん。図書館みたいですね。これだけの本を移動させるなんて、大変ですから」
「それなら、寝室を使って」
「そしたら朝比奈さんは? どこで寝るんですか?」
「リビングのソファで」

すると凛香は上目遣いに礼央を見上げて、怒ったような顔をする。

「だめです。激務の朝比奈さんは、ちゃんとベッドで寝てください。私がソファで寝ます」
「そんなことできるか。男として情けない」
「じゃあ、一緒にベッドで寝ましょ」
「なっ、は? ちょっ……」

面食らう礼央を尻目に、凛香はスタスタと寝室に入る。

「大きなベッド! これなら二人で寝ても充分広いですね」
「ちょっと待て」

ようやく礼央は手を伸ばして遮った。

「それはできない。恋人でも夫婦でもないのに」
「じゃあ、恋人になればいい?」
「え?」
「それとも夫婦?」
「は?」
「交際ゼロ日婚っていうんですって、そういうの」
「いかん! 結婚は恋人になってからだ」

真顔で言うと、凛香は顔を赤くする。

「そんな本気にならなくても……。じゃあ、恋人からで、いいですか?」

ちらりと可愛らしく顔を見上げてくる凛香に、礼央はしっかと頷く。

「ああ、それでいい」
「はい。では、よろしくお願いします」

小さく頭を下げてから、凛香はにこっと礼央を見て笑った。