「朝比奈検事!」
矢島がすぐ後ろから追いかけてくる。
「ここだ、突入する」
「はい」
廃墟と化している古びた倉庫のシャッターを上げようとするが、鍵がかかっていて動かない。
「今、なにか工具を……」
「矢島、下がれ」
え?と振り向いた矢島の顔すれすれに、ヒュッと空気を切り裂いて礼央が回し蹴りをした。
ガシャン!と大きな音がして、シャッターがへこむ。
地面から十五センチほどの空洞ができていた。
「上げろ」
二人で力任せにシャッターを引き上げる。
ぐにゃりと曲がったシャッターの下に、人が潜り込めるくらいのスペースができると、礼央は即座に中へと身を滑らせた。
むわっとむせ返るような暑さの中、顔をしかめながら目を凝らす。
「あそこだ!」
乱雑に散らばった鉄パイプやトタン板の間に、後ろ手に縛られぐったりと横たわる凜香の姿があった。
「しっかりしろ!」
駆け寄って抱き起こすが、反応はない。
驚くほど身体が熱く、唇は渇き切り、顔色も悪かった。
礼央は急いで縛ってあったロープを解き、凜香の脈と呼吸を確かめる。
「かすかだが脈は触れる。呼吸も確認」
「よかった……。すぐに救急車を回します」
そう言って矢島が身を翻す。
礼央は凜香を抱き上げると、倉庫から出た。
「朝比奈さん、冷たい水です」
矢島がパトカーから持って来たペットボトルを差し出す。
礼央は凜香の口元にそっとペットボトルを傾けた。
少しずつ、少しずつ。
「頼む、飲んでくれ」
祈るように呟くと、わずかにコクッと凜香の喉が動いた。
「深月さん! わかるか? 俺だ」
ぼんやりと目を開けた凜香が、視線をさまよわせる。
「……あさ、ひ、な、さん?」
「そうだ。よかった……」
声を震わせて、礼央は凜香を抱きしめた。
その時、救急車がすぐ近くに滑り込むようにやって来て、凜香はすぐさま中へと運ばれる。
「重度の熱中症が疑われる」
礼央の言葉に、救急隊員が頷いた。
「わかりました。点滴で水分補給、冷却ジェルで体温を下げていきます。すぐに病院へ」
サイレンを鳴らしながら走り出した救急車の中で、酸素マスクをつけられた凜香は、再びぐったりと目を閉じたままだった。
「がんばれ、もう少しだ。必ず助けるから」
礼央は祈るように凜香の手をギュッと握りしめていた。
矢島がすぐ後ろから追いかけてくる。
「ここだ、突入する」
「はい」
廃墟と化している古びた倉庫のシャッターを上げようとするが、鍵がかかっていて動かない。
「今、なにか工具を……」
「矢島、下がれ」
え?と振り向いた矢島の顔すれすれに、ヒュッと空気を切り裂いて礼央が回し蹴りをした。
ガシャン!と大きな音がして、シャッターがへこむ。
地面から十五センチほどの空洞ができていた。
「上げろ」
二人で力任せにシャッターを引き上げる。
ぐにゃりと曲がったシャッターの下に、人が潜り込めるくらいのスペースができると、礼央は即座に中へと身を滑らせた。
むわっとむせ返るような暑さの中、顔をしかめながら目を凝らす。
「あそこだ!」
乱雑に散らばった鉄パイプやトタン板の間に、後ろ手に縛られぐったりと横たわる凜香の姿があった。
「しっかりしろ!」
駆け寄って抱き起こすが、反応はない。
驚くほど身体が熱く、唇は渇き切り、顔色も悪かった。
礼央は急いで縛ってあったロープを解き、凜香の脈と呼吸を確かめる。
「かすかだが脈は触れる。呼吸も確認」
「よかった……。すぐに救急車を回します」
そう言って矢島が身を翻す。
礼央は凜香を抱き上げると、倉庫から出た。
「朝比奈さん、冷たい水です」
矢島がパトカーから持って来たペットボトルを差し出す。
礼央は凜香の口元にそっとペットボトルを傾けた。
少しずつ、少しずつ。
「頼む、飲んでくれ」
祈るように呟くと、わずかにコクッと凜香の喉が動いた。
「深月さん! わかるか? 俺だ」
ぼんやりと目を開けた凜香が、視線をさまよわせる。
「……あさ、ひ、な、さん?」
「そうだ。よかった……」
声を震わせて、礼央は凜香を抱きしめた。
その時、救急車がすぐ近くに滑り込むようにやって来て、凜香はすぐさま中へと運ばれる。
「重度の熱中症が疑われる」
礼央の言葉に、救急隊員が頷いた。
「わかりました。点滴で水分補給、冷却ジェルで体温を下げていきます。すぐに病院へ」
サイレンを鳴らしながら走り出した救急車の中で、酸素マスクをつけられた凜香は、再びぐったりと目を閉じたままだった。
「がんばれ、もう少しだ。必ず助けるから」
礼央は祈るように凜香の手をギュッと握りしめていた。



