この手に愛と真実を〜クールな検事の一途な想い〜【書籍化】

「明日からお盆休みだね」

仕事をしながら、ふと向かいの席の先輩が声をかけてきた。

「凜香ちゃん、社長のご予定ってどうなってるの? お盆期間は社長もずっとオフ?」
「一応オフにはなっているんですけど、時々出社されると思います。年末年始もいつもそうですから」
「そっか。凜香ちゃんは? 社長に合わせて出社するの?」
「来なくていいと言われています。実際、社長がいつ出社されるかもわからないですし。でも私も時々出社しようかと。メールチェックやスケジュール変更もあるでしょうから」
「そう。ご実家のお母さんはもう大丈夫?」

凜香は、途端に背筋を伸ばして恐縮する。

「はい、もうすっかり元気です。その節はご迷惑おかけしました」
「ううん、気にしないで。凜香ちゃんも、お盆の間はご実家でゆっくりしてね」
「ありがとうございます」

罪悪感に駆られるが、ここはありがたく厚意を受け取ることにした。

集中して仕事をこなし、定時になると挨拶して席を立つ。
社長室に行くと、ちょうど社長も帰り支度をしているところだった。

「お待たせ。それじゃあ行こうか」
「はい」

二人でエレベーターで一階に下り、ハイヤーでレストランに向かった。