この手に愛と真実を〜クールな検事の一途な想い〜【書籍化】

一度凜香をマンションまで送り届けてから、再び礼央は警視庁に戻り、捜査本部で会議に臨む。
会議室に集まった刑事たちに、キビキビと指示を与えた。

「今回の作戦は時間が勝負だ。こちらが仕掛けたのを察知すれば、フーメイはすぐに動き出すだろう。証拠隠滅を図るのか、それともわが身ひとつで逃げ出すのか。あらゆるパターンを想定し、先回りして捕まえろ。フーメイの潜伏先は定かではない。陸、海、空、それぞれの関係各所と連携を取り、網を張っておけ。黒岩は今もマークしている。決して目を離すな。フーメイが接触する可能性もある。それから鮎川社長の警護も怠るな」
「はい!」

続いて犯罪収益対策室(JAFIC)の刑事たちにも話し出す。

「フーメイは今後、国際犯罪組織サンクチュアリとコンタクトを取るはずだ。サンクチュアリは麻薬の密売だけでなく、マネーロンダリングでテロ資金も供与している。ICPO(国際刑事警察機構)やFATF(金融活動作業部会)とも連携を取り、しっぽを掴め」
「はい!」
「それぞれぬかりなく今夜のポジションと任務を頭に叩き込み、遂行するように。以上だ」

慌ただしく動き出す刑事たちを見ながら、礼央は大きく息を吸い込んだ。

いよいよ今夜。
必ず証拠を押さえてフーメイを捕まえる。

矢島ともう一度入念に動きを確認してから、夕方の十八時にマンションへと向かった。