この手に愛と真実を〜クールな検事の一途な想い〜【書籍化】

翌朝も九時に凜香を迎えに行き、二人で警視庁に向かう。
凜香が作ってくれたおにぎりを食べてから、作戦について確認した。

「深月さんと朝比奈検事は今夜遅く、一時四十分にここを出発して、覆面車両でワンアクトの本社ビルに向かいます。ビル周辺は常に私服警察官が張り込んで状況を確認中。異常がなければビルの裏路地、この位置に車を停めて中で待機してください」

そう言って矢島が、大きな地図に赤い丸印をつける。

「私は警視庁内の捜査本部で準備し、インカムで指示します。ニ時十八分に私がリモート操作でビルの警備室の映像をループ再生し、セキュリティーゲートの通知をオフに設定します。完了したらインカムでお知らせしますので、深月さんはIDカードをタッチして電子ロックを解除してください。カメラの映像も通知も変化がないので、警備員は気づきません。そのすきに、お二人は通用口の中に入って、この階段を下りて地下駐車場に行きます。その後ただちに深月さんの社用パソコンを開き、社内Wi-Fiに接続してください。あとは私の作業を待つだけです。完了すればお知らせしますので、深月さんと朝比奈検事は即座に来た道を戻って退出し、車に戻ってください」
「はい、わかりました」

凜香は神妙な面持ちで返事をした。

「深月さん、これ以外のことはなにも考えないでください。単純にあなたがやることだけを頭に入れておいて、必要以上にあれこれ心配しないように。難しいかもしれませんが、落ち着いて淡々とこなしてください。そしていつもそばには朝比奈検事がいることをお忘れなく。私も常にあなたと会話できる状態です。あなたを決してひとりにはしない。それだけは覚えておいてくださいね」
「はい、ありがとうございます。とても心強いです」

にこっと笑う凜香に、矢島も安心したように笑みを浮かべる。

「さてと! では今夜に備えて、深月さんはゆっくり休んでください。美味しいものを食べて、テレビでも見て、部屋でリラックスしてお待ちください。ベッドで寝ていてもいいですよ。のちほど朝比奈検事がお迎えに行きますので」
「わかりました。よろしくお願いします」

頭を下げる凜香に、礼央は「こちらこそ」と短く答えた。