この手に愛と真実を〜クールな検事の一途な想い〜【書籍化】

「矢島、悪いが今日はこれで帰らせてもらう。なにかあったらすぐに連絡してくれ」

帰り支度をしながら声をかけると、矢島はニヤリと意味深な視線を礼央に投げた。

「わかりました。彼女の警護、しっかりお願いします」
「……当然だ」
「作戦当日のことじゃないですよ?」
「……なにが言いたい?」
「そのままです。深月さんの身も心も、しっかり守ってあげてくださいね」

返す言葉が見つからず、礼央は矢島を睨みつける。

「おや? ぐうの音も出ませんか。さすがの敏腕検事も、こういうことには不慣れなんですね」
「おまっ……、なにを調子に乗っている?」
「ははっ、冗談ですよ。嬉しかったです、さっき」
「は? 今度はなんだ」
「そのままですよ。さっきの朝比奈さんの言葉が、素直に嬉しかったんです。俺、必ずやり遂げてみせますから。深月さんと朝比奈さんのためにも」

真剣にそう言う矢島に、礼央も正面から向き合った。

「ああ、必ずやってのけるぞ」
「はい!」

そうだ、必ずやってみせる。
彼女のためにも。
礼央は拳を握りしめると、足早に会議室をあとにした。