「率直に申し上げます。私たちは、あなたの会社を捜査しています」
いきなりそう切り出すと、凛香は目を見開いた。
「私の会社を、捜査……ですか? いったい、どういうことでしょうか」
「事の発端は、不正アクセス事件が相次いだことです。ここにいる矢島が所属する警視庁サイバー犯罪対策課に、いくつかの企業から被害の相談を受けました。それが全てワンアクトの傘下の企業であることが判明。矢島が捜査に着手し、私が協力要請を受けました。不正アクセスの被害については、社長秘書であるあなたの耳にも入っているのではないですか?」
「いえ、私はなにも」
「では社長は敢えて、あなたには黙っていたのかもしれませんね」
礼央の言葉に凛香はなにかを考え込む。
礼央はその様子を注意深く見守った。
やがて凛香が口を開く。
「あの、少しお聞きしたいのですが」
「なんでしょう」
「不正アクセス事件に、東京地検特捜部が関わるのは、よくあることなのですか?」
隣に座る矢島がハッと息を呑むのが分かり、礼央はわずかに視線を動かしてけん制してから、ゆったりと凛香に顔を向けた。
「珍しいことではありません。今回は被害件数が多かったことと、全てワンアクトテクノロジーズに関連する企業であることから、念のために我々が協力して捜査することになりました」
「そうですか……」
「この矢島が、まずは社長秘書であるあなたを通して社長の交友関係を探ろうとした結果、お恥ずかしいことにあなたに気づかれてしまった。重ね重ね、大変ご迷惑をおかけしました」
再び頭を下げると、凛香は「いえ、本当にもう大丈夫ですから」と手で遮った。
「このような失態は二度と犯しませんので、この先も捜査を続けさせていただきたい」
「はい、それはもちろん。よろしくお願いいたします。私にできることがありましたら、協力させていただきますので」
「ありがとうございます。それでは、なにかありましたらこちらの携帯電話にご連絡いただけますか?」
そう言って礼央は、名刺を凛香に差し出した。
凛香は両手で受け取ると、自分も名刺ケースから一枚取り出して礼央に差し出す。
矢島とも名刺交換すると、今日のところはこれで、と話を終えた。
いきなりそう切り出すと、凛香は目を見開いた。
「私の会社を、捜査……ですか? いったい、どういうことでしょうか」
「事の発端は、不正アクセス事件が相次いだことです。ここにいる矢島が所属する警視庁サイバー犯罪対策課に、いくつかの企業から被害の相談を受けました。それが全てワンアクトの傘下の企業であることが判明。矢島が捜査に着手し、私が協力要請を受けました。不正アクセスの被害については、社長秘書であるあなたの耳にも入っているのではないですか?」
「いえ、私はなにも」
「では社長は敢えて、あなたには黙っていたのかもしれませんね」
礼央の言葉に凛香はなにかを考え込む。
礼央はその様子を注意深く見守った。
やがて凛香が口を開く。
「あの、少しお聞きしたいのですが」
「なんでしょう」
「不正アクセス事件に、東京地検特捜部が関わるのは、よくあることなのですか?」
隣に座る矢島がハッと息を呑むのが分かり、礼央はわずかに視線を動かしてけん制してから、ゆったりと凛香に顔を向けた。
「珍しいことではありません。今回は被害件数が多かったことと、全てワンアクトテクノロジーズに関連する企業であることから、念のために我々が協力して捜査することになりました」
「そうですか……」
「この矢島が、まずは社長秘書であるあなたを通して社長の交友関係を探ろうとした結果、お恥ずかしいことにあなたに気づかれてしまった。重ね重ね、大変ご迷惑をおかけしました」
再び頭を下げると、凛香は「いえ、本当にもう大丈夫ですから」と手で遮った。
「このような失態は二度と犯しませんので、この先も捜査を続けさせていただきたい」
「はい、それはもちろん。よろしくお願いいたします。私にできることがありましたら、協力させていただきますので」
「ありがとうございます。それでは、なにかありましたらこちらの携帯電話にご連絡いただけますか?」
そう言って礼央は、名刺を凛香に差し出した。
凛香は両手で受け取ると、自分も名刺ケースから一枚取り出して礼央に差し出す。
矢島とも名刺交換すると、今日のところはこれで、と話を終えた。



