どれくらいそうしていたのだろう。
ふいにチャイムの音がして、凜香はハッと顔を上げる。
インターフォンのモニターに礼央が映っていた。
(朝比奈さん!)
凜香は急いで立ち上がると玄関に駆け寄り、ドアを開けるなり礼央に抱きついた。
「え、どうした!?」
驚いたように礼央が身を固くする。
「なにがあった? 誰かになにかされたのか?」
肩を掴まれ、凜香は首を横に振った。
「じゃあ、いったい……」
凜香の顔を覗き込んだ礼央は、ハッとしたように言葉に詰まる。
凜香の目からとめどなく涙がこぼれ落ちていた。
「ごめん、なさい。私……」
身体を離して顔をそむけると、グッと肩を抱き寄せられる。
「いいから話して。どうした?」
いつになく真剣な眼差しで見つめられ、凜香は礼央のその漆黒の瞳から目をそらせなくなった。
「私、怖くて。どうしようもなく不安になってさみしくて、朝比奈さんに戻って来てほしくて、ずっと待っていて……。だからこうして顔を見たら、ホッとして気が緩んで……」
涙で声を詰まらせながらそう言うと、礼央はギュッと凜香を両腕で抱きしめた。
「ひとりにしてすまなかった。もう大丈夫だから」
「……はい」
耳元でささやかれる低い声と大きな腕の温もりに安心して、凜香は礼央に身を任せる。
胸の奥がじわりと温かくなり、心がふわっと軽くなった。
大きく息を吸うと、気持ちを落ち着かせて顔を上げる。
「すみません、朝比奈さん。驚かせてしまって」
「いや。落ち着いたか?」
「はい」
笑いかけると、礼央も頬を緩めてから、もう一度凜香の頭を抱き寄せた。
「いつでも電話していいと言っただろう? これからはすぐにかけてこい」
「でも、なにかあったわけでもないのに」
「さみしくなった、それだけで俺はすぐに駆けつける」
「え、本当に?」
「……こんなことで嘘をついてどうする」
「でも、なんか。もし矢島さんがそう言ったら『寝ぼけたこと言ってんじゃねえ!』って、すぐにガチャッて切りそうだから」
「当然だ。矢島ならそうする」
「は!?」
ポカンとしたあと、凜香は思わず吹き出した。
「朝比奈さんって、冗談と本気の境界線がわからなくて。どこまで信じていいのか、ふふふ」
「冗談なんてこれっぽっちも言ってない」
「あはは! そのセリフもウケ狙いじゃなくて?」
「当然だ」
凜香は肩を震わせて笑いをこらえながら、ボソッと呟く。
「……当然だ」
「ん? なんだ、それ」
「朝比奈さんのモノマネ」
「なんだと!?」
「きゃー、怖い! 助けて、矢島さん」
「なんであいつを呼ぶんだ。役立たずだぞ?」
「あはは! ひどーい」
ひとしきり笑うと、凜香は目尻に浮かんだ涙を指先で拭った。
「あー、おもしろかった」
「数分前はしおらしく泣いてたのに?」
「だって朝比奈さんがおかしくて」
「やれやれ……」
「お腹空いちゃった。ご飯にしましょ。ほら、朝比奈さんも早く上がってください」
「え、ちょっと、おい」
凜香は礼央の腕を掴んで強引に部屋に上げた。
ふいにチャイムの音がして、凜香はハッと顔を上げる。
インターフォンのモニターに礼央が映っていた。
(朝比奈さん!)
凜香は急いで立ち上がると玄関に駆け寄り、ドアを開けるなり礼央に抱きついた。
「え、どうした!?」
驚いたように礼央が身を固くする。
「なにがあった? 誰かになにかされたのか?」
肩を掴まれ、凜香は首を横に振った。
「じゃあ、いったい……」
凜香の顔を覗き込んだ礼央は、ハッとしたように言葉に詰まる。
凜香の目からとめどなく涙がこぼれ落ちていた。
「ごめん、なさい。私……」
身体を離して顔をそむけると、グッと肩を抱き寄せられる。
「いいから話して。どうした?」
いつになく真剣な眼差しで見つめられ、凜香は礼央のその漆黒の瞳から目をそらせなくなった。
「私、怖くて。どうしようもなく不安になってさみしくて、朝比奈さんに戻って来てほしくて、ずっと待っていて……。だからこうして顔を見たら、ホッとして気が緩んで……」
涙で声を詰まらせながらそう言うと、礼央はギュッと凜香を両腕で抱きしめた。
「ひとりにしてすまなかった。もう大丈夫だから」
「……はい」
耳元でささやかれる低い声と大きな腕の温もりに安心して、凜香は礼央に身を任せる。
胸の奥がじわりと温かくなり、心がふわっと軽くなった。
大きく息を吸うと、気持ちを落ち着かせて顔を上げる。
「すみません、朝比奈さん。驚かせてしまって」
「いや。落ち着いたか?」
「はい」
笑いかけると、礼央も頬を緩めてから、もう一度凜香の頭を抱き寄せた。
「いつでも電話していいと言っただろう? これからはすぐにかけてこい」
「でも、なにかあったわけでもないのに」
「さみしくなった、それだけで俺はすぐに駆けつける」
「え、本当に?」
「……こんなことで嘘をついてどうする」
「でも、なんか。もし矢島さんがそう言ったら『寝ぼけたこと言ってんじゃねえ!』って、すぐにガチャッて切りそうだから」
「当然だ。矢島ならそうする」
「は!?」
ポカンとしたあと、凜香は思わず吹き出した。
「朝比奈さんって、冗談と本気の境界線がわからなくて。どこまで信じていいのか、ふふふ」
「冗談なんてこれっぽっちも言ってない」
「あはは! そのセリフもウケ狙いじゃなくて?」
「当然だ」
凜香は肩を震わせて笑いをこらえながら、ボソッと呟く。
「……当然だ」
「ん? なんだ、それ」
「朝比奈さんのモノマネ」
「なんだと!?」
「きゃー、怖い! 助けて、矢島さん」
「なんであいつを呼ぶんだ。役立たずだぞ?」
「あはは! ひどーい」
ひとしきり笑うと、凜香は目尻に浮かんだ涙を指先で拭った。
「あー、おもしろかった」
「数分前はしおらしく泣いてたのに?」
「だって朝比奈さんがおかしくて」
「やれやれ……」
「お腹空いちゃった。ご飯にしましょ。ほら、朝比奈さんも早く上がってください」
「え、ちょっと、おい」
凜香は礼央の腕を掴んで強引に部屋に上げた。



