この手に愛と真実を〜クールな検事の一途な想い〜【書籍化】

「失礼いたします」

矢島が開けたドアから入ると、礼央はソファから立ち上がった女性の前に大きな歩幅で歩み寄った。

「東京地方検察庁特別捜査部の検事、朝比奈と申します。隣は合同で捜査にあたっている警視庁の矢島です」

手帳を見せながらやや早口で名乗ると、女性は両手を揃えて伏し目がちに頭を下げた。

「株式会社ワンアクトテクノロジーズで社長秘書をしております、深月(みづき)|凛香と申します」

黒髪を一つにまとめ、ベージュのスーツをスタイル良く着こなした品のある凛香は、いかにも大企業の社長秘書といった雰囲気だ。

「深月さんですね。まずは矢島があなたをつけ回し、怖がらせてしまったことを、心よりお詫びいたします」

礼央と矢島は並んで深々と頭を下げる。

「いえ、そんな。大丈夫ですから、お顔を上げてください。それより、なにがどうなっているのかをお聞きしたいです」

礼央はゆっくりと間を置いてから、身体を起こした。

「ごもっともです。説明もせずいきなり怖い思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした。順を追ってお話しいたします。どうぞおかけください」
「はい、失礼いたします」

凛香が右手でスカートを整えつつ、スッと背筋を伸ばしたまま浅く腰を下ろすと、礼央も向かい側に座り、軽く開いた両脚に腕を載せた。