◇◇◇
一方、礼央たちを見送ったあと、凛香も鮎川と早速社長室で事実調査に乗り出した。
「深月さん、経理部のファイルにアクセスして、怪しいお金の動きをピックアップしてくれる? まずは過去半年間の分を」
「かしこまりました」
「君には経理部のデータへのアクセス権限がないから、私のパソコンを使って。その代わり私が君のパソコンを借りてもいいかな? 不正アクセス事件について、社員に知らせる文面を作りたい」
「はい、承知しました。では社長のデスクに置きますね」
そうして二人でパソコンを交換し、作業に取りかかる。
凛香は領収書や振り込みの控えなどを一枚ずつチェックし、不審なものをフォルダにまとめていくが、予想以上に数が多かった。
(出張で熱海に新幹線でって、おかしいでしょ? それにこっちは、都内のホテルの宿泊代とレストランの領収書。宛名が社長になってるけど、この日付、社長が海外出張中だわ)
社長の名前を使った経費は、数は多いもののそこまで金額は大きくない。
それよりも気になったのは、支出だ。
関連会社にかかる費用として、外注先に支払っているが、支払先の口座がどれも似たような銀行で海外送金履歴もある。
しかも金額が大きい。
以前から凛香が気になっていたコンサル料や外注費は、一回につき三十万から五十万円ほど。
ひとつの会社として見れば、半年に一回程度なのだが、なにせワンアクトテクノロジーズの関連会社は二百社ほどある。
(ちょっと待って。五十万の経費を二百社……。合計、一億!?)
しかも半年でその金額なのだ。
単純計算でも一年で二億かかっていることになる。
(どうしてこれがまかり通ってきたの? 一件ずつはそこまで高額ではないから、見過ごされてしまった? 本当にこんなに大きなお金が、黒岩副社長に流れているの?)
もはや呆然としてしまう。
「深月さん? どうかした?」
社長の呼びかけに、ようやく凛香は我に返った。
「社長。まだ途中なのですが、こちらをご覧ください」
震えそうになる手でパソコンを抱え、社長のデスクに歩み寄る。
説明を始めると、すぐさま社長の顔色が変わった。
「まさか、ここまでとは……」
「はい。それにしてもおかしいです。システム上では、きちんと承認履歴も承認者情報も残っていますが、億単位の経費を経理部が見過ごすとは思えません。考えられるのは……」
「改ざん、か」
「……はい」
気持ちを整えるようにじっとうつむいたあと、社長は静かに顔を上げる。
「朝比奈検事に連絡を」
「かしこまりました」
二人は黒岩と戦う覚悟を決めた。
一方、礼央たちを見送ったあと、凛香も鮎川と早速社長室で事実調査に乗り出した。
「深月さん、経理部のファイルにアクセスして、怪しいお金の動きをピックアップしてくれる? まずは過去半年間の分を」
「かしこまりました」
「君には経理部のデータへのアクセス権限がないから、私のパソコンを使って。その代わり私が君のパソコンを借りてもいいかな? 不正アクセス事件について、社員に知らせる文面を作りたい」
「はい、承知しました。では社長のデスクに置きますね」
そうして二人でパソコンを交換し、作業に取りかかる。
凛香は領収書や振り込みの控えなどを一枚ずつチェックし、不審なものをフォルダにまとめていくが、予想以上に数が多かった。
(出張で熱海に新幹線でって、おかしいでしょ? それにこっちは、都内のホテルの宿泊代とレストランの領収書。宛名が社長になってるけど、この日付、社長が海外出張中だわ)
社長の名前を使った経費は、数は多いもののそこまで金額は大きくない。
それよりも気になったのは、支出だ。
関連会社にかかる費用として、外注先に支払っているが、支払先の口座がどれも似たような銀行で海外送金履歴もある。
しかも金額が大きい。
以前から凛香が気になっていたコンサル料や外注費は、一回につき三十万から五十万円ほど。
ひとつの会社として見れば、半年に一回程度なのだが、なにせワンアクトテクノロジーズの関連会社は二百社ほどある。
(ちょっと待って。五十万の経費を二百社……。合計、一億!?)
しかも半年でその金額なのだ。
単純計算でも一年で二億かかっていることになる。
(どうしてこれがまかり通ってきたの? 一件ずつはそこまで高額ではないから、見過ごされてしまった? 本当にこんなに大きなお金が、黒岩副社長に流れているの?)
もはや呆然としてしまう。
「深月さん? どうかした?」
社長の呼びかけに、ようやく凛香は我に返った。
「社長。まだ途中なのですが、こちらをご覧ください」
震えそうになる手でパソコンを抱え、社長のデスクに歩み寄る。
説明を始めると、すぐさま社長の顔色が変わった。
「まさか、ここまでとは……」
「はい。それにしてもおかしいです。システム上では、きちんと承認履歴も承認者情報も残っていますが、億単位の経費を経理部が見過ごすとは思えません。考えられるのは……」
「改ざん、か」
「……はい」
気持ちを整えるようにじっとうつむいたあと、社長は静かに顔を上げる。
「朝比奈検事に連絡を」
「かしこまりました」
二人は黒岩と戦う覚悟を決めた。



