この手に愛と真実を〜クールな検事の一途な想い〜【書籍化】

社長との電話を終えると、タブレットでスケジュールを確認してから、矢島の携帯電話にかけてみた。

(夕べ遅かったし、まだお休み中かな?)

そう思ったが、ワンコールですぐに応答があった。

『はい、矢島です』
「おはようございます。ワンアクトテクノロジーズの深月です」
『深月さん! おはようございます。昨日はありがとうございました』
「こちらこそ。矢島さん、ゆっくりお休みになれましたか?」
『ああ、まあ、二日前に』

は?と聞き返すと、ははっと軽く笑いながらかわされる。

『それより、どうかしましたか? 深月さん』
「あ、はい。社長の鮎川に昨夜のことを報告いたしました。鮎川も、なるべく早く矢島さんたちとお話しさせていただきたいと申しております」
『そうですか。では月曜日の朝イチでお伺いできますか?』

え、そんなに早く?と思いつつ、凛香は「大丈夫です」と頷く。

『よかった。じゃあ、始業時間に合わせて伺いますね。できれば警察だということは伏せておきたいのですが』
「かしこまりました。わたくしが直々にお出迎えいたします。では明後日の月曜日、朝九時にメインエントランスでお待ちしております。なにかありましたら、わたくしの名刺に記載してある携帯電話にご連絡いただけますか?」
『はい、ありがとうございます。えーっと、朝比奈検事からは? 深月さんに伝言ないですか?』

振り返って尋ねているような矢島の声に、凛香はまたしても驚いた。

(矢島さん、朝比奈さんと一緒にいるの? それって、まだ勤務中ってこと? まさか、夕べからずっと?)

するとやや遠くから「いや、特にない」という礼央の声が聞こえてきた。

『わかりました。じゃあ深月さん、月曜日に』
「あ、はい。よろしくお願いいたします」

慌てて返事をして通話を終える。

(お二人とも、うちの会社の捜査のために徹夜したってことなのね……)

二日前に休んだ、という矢島の言葉からすると、そのあとはずっと働き詰めだということだろう。
凛香は申し訳なさでいっぱいになる。

(私も少しでも役に立てるよう、がんばろう)

気を引き締めると、早速社長に日程の連絡をしてから、資料の準備を始めた。