♠♠♠
「いやー、助かりますね。仕事ができる人だなあ、深月さん」
ファイルをめくりながらしみじみと呟く矢島を、礼央は「アホ!」と一喝する。
「それはお前の仕事だろう? なぜ事前にやっておかなかった?」
「いやー、だって、あまりに企業の数が多くてですね。一応やろうとはしましたよ?」
「結果やらなかったんだろう」
「まあ、そうですけど。でも深月さんのこと、一度はクロかも、なんて疑って申し訳なかったですよね。あ、見てください! 顔写真も入れてくれてる。すごいなー、さすがは深月さん。社長秘書だけありますね」
「呑気に感心するな!」
やれやれとため息をつくと、礼央はバンケットホールのあちこちに設置したカメラが映し出す映像を眺めた。
先週、凛香から「念のためお伝えします」と連絡があり、今夜の懇親会のことを教えてもらった。
首都圏の主要なIT企業が集まると聞いて、すぐさま潜入することを決め、会場のホテルに協力を要請した。
ひとまずこの客室でモニター越しに懇親会の様子を見つつ、怪しい企業をチェックしていくつもりだ。
今はまだ、スタッフが忙しく会場の準備に動き回っている。
開始時間の十五分前になると、少しずつホワイエに参加者が姿を現し始めた。
受付を済ませてバンケットホールに向かうゲストは、フォーマルなスーツを着こなした若い男性が多く、外国人の姿も見受けられる。
「なんかセレブリティの集まりって感じですね。我々とは無縁の世界だなー。あ!深月さんだ。おお、ビューティフル!」
矢島の声に、礼央もモニターを見つめた。
先ほどのスーツではなく、ノーブルなロイヤルブルーのロングドレスを身にまとい、髪もアップでまとめた凛香が、スラリとした男性に寄り添いながらバンケットホールに入ってきた。
「うわー、美男美女! お隣は彼氏かな?」
「社長だろうが」
「つき合ってるのかな?」
「知るか! それより仕事しろ」
この参加者の中に、不正アクセスをした張本人がいるかもしれない。
煙幕のようにわざとらしく細工したのは、やはり国際的な犯罪を隠すためなのか?
いったい、どんな犯罪なのか。
その全貌は?
礼央は気を引き締めて、モニターに映る人物をひとりひとり凝視した。
「いやー、助かりますね。仕事ができる人だなあ、深月さん」
ファイルをめくりながらしみじみと呟く矢島を、礼央は「アホ!」と一喝する。
「それはお前の仕事だろう? なぜ事前にやっておかなかった?」
「いやー、だって、あまりに企業の数が多くてですね。一応やろうとはしましたよ?」
「結果やらなかったんだろう」
「まあ、そうですけど。でも深月さんのこと、一度はクロかも、なんて疑って申し訳なかったですよね。あ、見てください! 顔写真も入れてくれてる。すごいなー、さすがは深月さん。社長秘書だけありますね」
「呑気に感心するな!」
やれやれとため息をつくと、礼央はバンケットホールのあちこちに設置したカメラが映し出す映像を眺めた。
先週、凛香から「念のためお伝えします」と連絡があり、今夜の懇親会のことを教えてもらった。
首都圏の主要なIT企業が集まると聞いて、すぐさま潜入することを決め、会場のホテルに協力を要請した。
ひとまずこの客室でモニター越しに懇親会の様子を見つつ、怪しい企業をチェックしていくつもりだ。
今はまだ、スタッフが忙しく会場の準備に動き回っている。
開始時間の十五分前になると、少しずつホワイエに参加者が姿を現し始めた。
受付を済ませてバンケットホールに向かうゲストは、フォーマルなスーツを着こなした若い男性が多く、外国人の姿も見受けられる。
「なんかセレブリティの集まりって感じですね。我々とは無縁の世界だなー。あ!深月さんだ。おお、ビューティフル!」
矢島の声に、礼央もモニターを見つめた。
先ほどのスーツではなく、ノーブルなロイヤルブルーのロングドレスを身にまとい、髪もアップでまとめた凛香が、スラリとした男性に寄り添いながらバンケットホールに入ってきた。
「うわー、美男美女! お隣は彼氏かな?」
「社長だろうが」
「つき合ってるのかな?」
「知るか! それより仕事しろ」
この参加者の中に、不正アクセスをした張本人がいるかもしれない。
煙幕のようにわざとらしく細工したのは、やはり国際的な犯罪を隠すためなのか?
いったい、どんな犯罪なのか。
その全貌は?
礼央は気を引き締めて、モニターに映る人物をひとりひとり凝視した。



