「あの、うちの部長がすみません」
息を切らせて走って来た石田が、足を止めるなり佐々木に向かって深々と頭を下げる。
その後ろから歩いてやって来た笹崎も、佐々木の前に立つと「すみません先生、うちの透也が」と困ったように笑って言った。
先程まで向かい合って言い争っていた逢坂と伏見だったが、今はその間に佐々木が立ち、二人の言い争う声が響いていた時には誰も彼も使うことを躊躇っていた生徒玄関には、通常通りに利用する生徒達の姿がある。
佐々木が間に立っていることで争う声は止んでいるが、お互いを睨む鋭い目つきはそのままで、石田と笹崎が現れると、今度はその視線が二人の方へと向けられる。
笹崎の更に後ろに立つ外崎は、二人の間からそれを眺めていた。
「ちょっと石田、“うちの部長がすみません”ってどういうことよ。私は別に――」
「いや、どう考えたって悪いのはお前の方だろ。俺の仕事を邪魔して」
「玄関塞いで邪魔してたのはあんたの方でしょうが!」
二人の声が響き出すと、通りかかった生徒達がびくっと肩を揺らして足を止めるが、そこで笹崎がすかさず「気にしないで。気を付けて帰ってね」などと笑顔で声をかけると、ほっとしたように歩き出す。



