廊下を急ぐ石田の耳に怒りの声が届く少し前、新聞部の部室では、外崎が石田の帰りを……というより飲み物の到着を待っていた。
「いっしー先輩遅いですね。はちみつジンジャーレモンティー、見つからないんですかね」
「どうかしらね。私のプレミアムココアが売り切れで途方に暮れているって線もあるわよ」
「なるほど、確かに」
そんな会話をしつつ石田を待っていた女子二人は、部室のドアが開く音に一斉に視線を向ける。
ようやく待ち人が戻って来たのかと思ったら、そこに立っていたのは招かれざる人物だった。
「やっほー、香月ちゃん、愛梨ちゃん」
笑顔でひらひらと手を振っていたのは、笹崎だった。
「……お呼びじゃない、さっさと帰れ」
「開口一番それはあんまりじゃない?」
逢坂に睨み付けられようとも、笹崎は一向に怯むことなく、笑顔のままで部室に足を踏み入れる。



