逢坂用のプレミアムココアと、外崎用のはちみつジンジャーレモンティー、それに自分用のブラックコーヒーを抱えて部室へ戻る道を歩いていた石田は、廊下のど真ん中でふと足を止めた。
通常ならばそんなところで突然足を止めれば、後ろの生徒に舌打ちされるか衝突されそうなものだが、放課後の廊下には石田以外の人の姿はない。
帰宅する生徒は既に学校を出ていて、部活に所属している生徒は活動の真っ最中だから。
そんな廊下で、石田は壁の方をじっと見つめている伏見を見つけて、思わず足を止めていた。
伏見の目の前には、新聞部が作り上げた校内新聞風の紹介文が貼られている。少し離れた石田の位置からでも、それは廊下で中々に存在を主張していた。
それを見つめている伏見があまりにも真剣だったから、まあ基本的に伏見は怒っているか真面目な顔をしているかの二択ぐらいなのだけれど、石田は声をかけるのも、無言で後ろを通り過ぎるのもなんとなく出来なくて、どうしたものかと立ち尽くしていた。
回れ右をして別の道を通って部室に戻ることも出来るが、わかっていても動くに動けない自分がいる。
迷いながらしばらく伏見を見つめていると、ふと伏見の視線が動いた。



