「ていうかさ、ほんともう……なんなのよ!ねえ、なんなのいしだ!!」

「“いしだ”じゃなくて“いした”です、部長」

石田が冷静に訂正しながらパソコンから顔を上げると、大声で吠えた逢坂が勢いよく机に突っ伏した。
逢坂がこんな風になる時は、大抵生徒会が絡んでいる。
今日は生徒会室に呼ばれていないはずだから、放課後真っすぐ部室にやって来た逢坂の怒りの原因があるとすれば……――石田は、今日も今日とてドアから一番近い席でスマートフォン片手にくつろいでいる田仲の方を見る。
原因はこの男の存在だろうかと石田が考えていると、逢坂が顔を上げぬままくぐもった声でぶつぶつ言った。

「奏太郎の大バカ野郎が、“うちの由人くんをお願いね”って……“お願いね”ってなによ!意味がわかんないのよ!お前のとこの由人くんならお前が責任もってどうにかしなさいよほんとにもう!!」

握った拳が、だんっと力強く机を叩く。
怒りの原因は田仲の存在であると同時に、笹崎の発言にもあったらしい。おそらく、部室に来る前に言われたのだろう。
部室に来て早々に荒れている逢坂を、外崎が心配そうに見つめる。そして、その視線を石田へと移した。